ある若人のブログ

どこかで学生をしているかもしれません

やさしい日本語と優しくない日本人

台風19号の接近に伴い、先日NHKの公式ツイッターがこのようなツイートを投稿しました。

 

 

 

このツイートに対し、ひらがなばかりで分かりにくいという批判や、外国人に向けての報道は英語ですれば良いという批判、また、多言語で対応をツイートしたJR西日本と比較して、JRの対応はすごい!みたいなことを言っている人もいました。

 

 

僕も初めて知ったのですが、NHKのツイートのような平易な言葉で表された日本語を「やさしい日本語」というそうです。元は阪神淡路大震災を機に考案され、災害時など緊急性が高い場合は、在日外国人向けに「やさしい日本語」による報道や案内が行われるようになったそうです。あの東日本大震災の時にも実用されているらしい。

 

 

世界の様々な言語に翻訳して伝えられれば一番ですが、緊急時で時間や人手が足りない時には、情報発信者は誰でも作ることができ、受信者はより多くの人が理解できる、そういう伝達手段が求められます。それを目指しての「やさしい日本語」なのでしょう。

 

 

「やさしい日本語」は、難しい言葉を避けること、短く簡単な文構造にすること、漢字の使用は簡単なものにとどめ、さらに全ての漢字にルビを振ることが主な規則だそうです。そういえば中学校の時に避難訓練の放送をALTの先生向けに書き換えさせるテストの問題がありました。音読したら1分くらいはありそうな長い文章を一つ一つ簡単な言葉に直していったのですが(「訓練、訓練、給食室で火災が発生、火の勢いが強く……」)、模範解答を見ると「火が燃えています。グラウンドに逃げてください」みたいなもので拍子抜けしました。そんな簡単でいいのか。まあ確かに、ALTの先生にしてみれば逃げるルートは周りの人についていけばいいし、状況とするべきことが伝わればいいのかな。

 

 

そもそもなんで「やさしい日本語」が必要なのかと言われれば、私が思うに一番多くの外国人に伝わるのが日本語だからです。だってここ日本だし。日本にくる人がまず勉強してくるであろう言語は日本語です。だからそんな彼らに向けて、ちょっと簡単な日本語で伝えようとする試みは決して間違いではないはずです。

 

 

批判している人の多くは、外国人に向けたメッセージは世界共通語であるところの英語でやればいいとしていますが、「やさしい日本語」の対象者には旅行者や留学生だけでなく、いわゆる出稼ぎ労働者なども含まれているはずであり、彼らに英語で話して十分通じるとは考えづらいです(バカにしているわけではないですが)。大体多くの人が中学、高校と6年間英語を学んでいるはずの日本人も英語スキルは碌なものじゃないんですから、日本にいる多くの非英語圏出身外国人に英語で伝達するのには限界があるでしょう。

(補足しておきますと、彼らをバカにしているわけではなく、寧ろ外国から来て日本語を学んで日本語で生活している彼らを尊敬すらしているのですが、そういう彼らに母国語と日本語以外に新たに言語を勉強する余裕や時間は少ないだろうという意味です。)

 

 

JR西日本が多言語で同じ内容をツイートしたものとの比較という面では、これはおそらく両者の報道の対象の違いからくる方向性で、どちらの対応が優れているとかそういう話ではないでしょう。JRはあくまで交通機関であり報道機関ではありません。そのため情報伝達の対象は交通機関を多く使う旅行客になるはずです。そうすると、連絡は日本語のほか、訪日客が多い中韓、英語で行えば十分でしょう。日本に旅行に来る人は裕福な人間であり、教育レベルもある程度保証できる(=非英語圏の人であってもある程度英語が通じる)と考えられるからです。

 

 

一方NHKは報道機関であり、日本人を中心とした日本にいる人全てを対象にしなければなりません。そういった人たちに緊急・重大な報道を行うときは、やはり中韓国語や英語だけでは不十分でしょう。近年はベトナムなどの東南アジアからの出稼ぎ労働者も増えています。どこのコンビニに行っても大抵1人2人は出稼ぎ労働者がいるんじゃないかと思ってしまうほどです。

 

 

考えてもみれば、例えば非英語圏の中国や韓国、東南アジアの国なんかにいる時に、避難指示を英語で出されるよりもその国の言葉で教えてもらえる方が安心感がありませんか?日本以外の国々で同様の試みがあるのかは知りませんが。ある意味災害の多い日本らしい試みだとは思います。

 

 

それにしてもこの「やさしい日本語」という外国人向けの取り組みを外国人が批評するのはともかく、最初から対象にされていない日本人がああだこうだ言っている姿は醜いです。この表現をもっとこうした方がいい、などの趣旨を理解した建設的な意見はもちろんいいのですが、「こんな小学生みたいな文章バカにしているのか」「読みづらい」などの、何故か自分に向けての報道だと思っている人(もちろんですがNHKは日本語話者向けの通常の報道もしています)、「英語の方が伝わりやすい」「いろんな言語に訳したものを伝えろ」といった、「やさしい日本語」を調べようともせず存在価値を全否定する人。NHKというだけでアレルギーを起こしているのでしょうか?

 

 

情報化とともに、情報の専門性がなくなってきたように思います。難しいノーベル賞の理論でも、ネットで調べれば何を言っているのかは理解できるような、そんな時代です。そんな中で、誰でも専門家になれるんだという万能感だけを持って、碌々調べもしないで物事を批判するようなアホどもが最近とても増えている気がします。彼らの手元にあるのはただの金属の箱なんでしょうか。もったいないから僕に寄越せ。

 

 

もっと ちゃんと しらべましょう。インターネットで はじを さらすのは やめましょう。